king krule

king kruleというサウスロンドン出身のアーティストがいる。

ポストパンクというジャンルにくくられることが一応多いのだが、ヒップホップやダブ、ジャズなどの影響を受けた越境的なセンスの持ち主で、その音楽性は複雑だ。

彼の『the ooz』というアルバムが私のお気に入りだ。特に「dum surfer」という曲を聴いたときの衝撃は今でも鮮明に思い出せる。

地面をはいずるようなベース。くぐもったドラムの処理。偏狭的に繰り返されるリフ。ボーカルは怒りに満ち、言葉を吐く。

意図的にだろうが、全体的に音響が汚されているのが特徴だ。例えるなら、地下の薄暗くて辛気臭いバーで演奏しているかのような。

彼はアンダーグラウンドのリアルを描いているが、しかしどこかドリーミーな要素もある。

眠れないとき、夜に支配されているような感覚が生じることがある。現実と非現実。彼の曲を聴いていると、その境目が曖昧になっていくような、夜の深みへと引きずり込まれてしまう。

彼の魅力を伝えるには文章が短すぎたが、ぜひ一度聴いてみてはいかがだろうか。